腰椎椎間板ヘルニアについて
腰椎椎間板ヘルニアとは
腰椎の代表的な疾患として腰椎椎間板ヘルニアがあります。20歳代から椎間板の加齢変化が始まり、椎間板が変性して髄核が飛び出し、脊髄や神経根を圧迫する病気です。遺伝的な要素も大きく、一卵性双生児のヘルニアの状態が同じ症例もあります。
症状について
ヘルニアの飛び出す方向により、中央型、傍中央型、外側型に分類されます。中央型では、椎間板が真後ろに飛びだして、腰髄の中央を圧迫します。腰の後ろからおしりへの痛みや、脚、足の痛み・痺れなどの脊髄症状が出ます。
傍中央型では、腰髄の片側が主に圧迫され、圧迫された側の上下肢に強い症状が出ます。外側型では、椎間板が後外側に飛び出し、神経根を強く圧迫します。片側の腰部から臀部側部、脚、足に強い神経痛や痺れを生じます。
治療方法
一般的には保存療法が用いられますが、痛みが強く日常生活に支障をきたす場合や発症して長い期間(3ヶ月以上程度)の場合は神経圧迫部分により様々な術式が用いられます。外側型の腰椎ヘルニアによる神経根症の場合は、保存的治療でも3か月で60〜90%の患者さんがほぼ治癒すると言われており、一般的に手術治療の対象とされていないのが現状です。
通院しても治らない患者さんは、整形外科や脳神経外科、神経内科、ペインクリニック、というようにドクターショッピングを繰り返したり、鍼灸院、整体、カイロプラクティックに通ったりと苦労されています。
保存的治療が多くの方で有効な外側型ヘルニアですが、痛みや痺れによって眠れない、仕事や家事ができない、という重症の患者さんに、「3か月は保存的治療で経過観察しましょう」と言うのは気の毒です。中には痛くてあおむけになれず、MRIすら撮影できない患者さんもいます。また前述のように、保存的治療では痛みが改善しない人や、痛みがとれてもしびれが強く残る人もあります。あるいは一旦症状が改善した後、運動や仕事などによって症状が再発することもよくあります。
これらの、①重症患者さん、②保存的治療では効果不十分な患者さん、③再発を繰り返す患者さんには、手術治療という選択肢もあります。
また特殊な症状として、神経根症によって下肢の筋肉の麻痺を生じることがあります。脚が挙がらなくなったり、足に力が入らなくなって満足に歩けなくなったりします。この場合、痛みや痺れが軽度のことも多いです。麻痺した筋肉は、筋萎縮を生じて細くなってきますので、なるべく早期に手術を行って、神経根を圧迫から開放する方が良いと思われます。
外側型腰椎ヘルニアに対する手術は、最近では内視鏡的ヘルニア摘出術(PED)を施行する病院が多いですが、志匠会ではPEDはもちろん従来の直視下や顕微鏡を使ったより確実な術式も患者さんの症状や都合に合わせて行っております。
腰椎ヘルニアの術式としては単に飛び出している椎間板の一部取り除くだけでは症状の改善が望めないものもあり、その場合は椎間板全体を取り除き代わりに自分の骨やケージと呼ばれるインプラントを設置する椎体固定術を行うこともあります。
いずれにしても全ての症状・病態に対して万能な術式は無いのが現状で、検査をして様々な症状・病態により的確な術式を行う事が必要となります。